人一倍こだわりの強い男がハマったスノーボード。
スノーボードを愛する表現者たちのライフスタイルをジャンルレスに紹介する「BORDERLESS」。フォトグラファーやスタイリスト、デザイナー、アートディレクター、起業家、そしてプロスノーボーダーなど、幅広い面々が名を連ねるユニークなタイプのメディアだ。そして、この発起人のひとりがMASAHさん。スタイリストとして20年以上前から雑誌やアーティストの衣装を手掛ける他、近年ではブランドのディレクションなどにも携わっている。そんな彼に聞いた、スノーボードにハマった理由と「BORDERLESS」の理想郷について。
「スタイリストを仕事の軸にしていた頃は、スノーボードのスの字も知りませんでした。実はまだ、始めてから5年くらいなんですよ。遅咲きの乱れ咲きでやらせてもらっています(笑)」
MASAHさんがスノーボードにのめり込んだのは、藤原ヒロシさんとの出会いがきっかけだった。藤原さんがかつてディレクションしていた「the POOL aoyama」で、2016年にMASAHさんと今宿麻美さん夫妻が、ファミリーをキーワードにしたセレクトショップ「IN THE HOUSE」を展開。そこからMASAHさんと藤原さんは親交が深まっていった。
「僕が青森に帰省していたタイミングで、ヒロシさんもライブで青森に来ていて。その時に『八甲田山でスノーボードするからMASAHくんもどう?』って誘ってくれたんですよ」
いざ同行してみると、コースのロープウェーは風雪で運休。自分の足で登ることに。さらに山頂に着くと、1m先も見えない猛吹雪。初心者には厳しすぎる洗礼を受けた。
「完全にアウェーな空気を感じつつも、そこは生粋のヒップホップ育ち。オーバーサイズのアウトドアウェアを着てニットキャップ被ってザックを背負う姿が古き良きニュースクールを感じたし、それにボードを小脇に抱える姿がレコードを持ってる様にも見えて、初めて自分にフィットした横ノリと出会った気がしました(笑)」
この出会いをきっかけに、どんどんスノーボードに魅了されていくMASAHさん。しかし、ハマっていくポイントは滑ること以外の要素が強かったそうだ。
「僕はこだわりが強くて凝り性。やりたいことが多いのに手をつけていないのは、使う道具のスペックやデザインが気になっちゃって、イチから調べるのが大変だから。でも、スノーボードを始めたからには、とことんやりたくなりました。幸いにも周りにはプロの方々がいて、疑問をすべて解決してくれたのが加熱していった理由。滑るより、まずは知識をつけることに寝る間を惜しまず時間を費やしました。とにかくギアを見ているのが楽しかったですね」
心から気に入っているブランドとタッグを組む。
こうして夢中になったスノーボード。ギアやウェアの吟味に始まり、滑る楽しさも見出した。
「まさか40歳を超えて、こんな新鮮なワクワク感を味わえるなんて思っていなくて、本当にスノーボードに感謝しています。こんなこと言うと生意気に聞こえるかもしれませんが、どんどんハマっていくうちに、仲間との出会いや自然と触れ合う気持ちよさ、新しい価値観を与えてくれたスノーボードに恩返しがしたい。僕にできることなら何でもやりたいと思うようになっていきました」
スノーボードのオンシーズンは冬のみだが、オフシーズンだからといってスノーボーダーは何もしてないわけではない。オフシーズンが充実しているスノーボーダーを集めて、1年の集大成としてみんなで雪山に集いたい、という思いで結成したのが「BORDERLESS」。そして、その発信方法のメインとなるのが、Instagramのリポストだった。
「発信しているメディアの軸が雑誌からウェブにどんどん移行するにつれて、SNSの影響力も強くなっていくのを感じて。もちろん、メディアを運営するのは簡単ではありません。やるなら予算も必要だけど、投資できるお金も時間もない。でも、Instagramのリポストなら手軽にできる。メンバーに了承を得て、みんながポストする写真の一部を僕がディレクションしているんです」
現在「BORDERLESS」のメンバーは12人。そして、その活動を応援してくれるブランドも増えてきた。資金ではなくプロダクト面でサポートしてもらい、メンバーが実際に使用して気に入ったらInstagramにアップして、それを「BORDERLESS」のアカウントでリポストというフローが完成した。
「基本、アイテムをベースにサポートしていただいていますが、ブランドの方々にはInstagramの投稿の制約を一切設けないようお願いしています。メンバーは、本当にいいと思ったら投稿する。僕からすると、このやり方こそ健全なメディアの在り方だと思うんです」
外遊びから日常生活まで寄り添うスタンレー。
そんな「BORDERLESS」の考えに賛同するサポーターのひとつにスタンレーがある。
「サポートを相談するブランドの基準は、パッと思い浮かぶ知名度。僕にとって保温保冷ボトルといえばスタンレーです。もちろん他にもブランドはありますが、創業110年の老舗に対する信頼は揺るがない。アメリカのブランドに対する憧れも強いですしね」
アイテム選びに決して妥協しないMASAHさん。スタンレーがそのお眼鏡にかなった理由は2つある。一つ目はスタンレーの質実剛健さ。
「機能性はもちろん大事ですけど、頑丈で、汚れていてもカッコいいところにスタンレーの魅力を感じます。ハンマートーン塗装が無骨でカッコいいですよね」
そして、二つ目が機能性。
「スタンレーの保温性はどこにも負けていないと思っています。特に“マスターシリーズ”は、冬でも温かさをキープしてくれるから重宝しています。正直、完璧ではないですよ。他のブランドにビハインドする部分もありますが、それを含めて愛せるんです。余白があるから、さらに興味が湧いてくるんですよね」
メンバーを含め、スタンレーは雪山のためだけに使っているわけではない。「夏場におけるポテンシャルも実感しています」とさらに続ける。
「スタンレーのすべてのアイテムを一度使わせてもらって、使用するシチュエーションに合わせて厳選しています。例えば、子供とプールに行った際は、真空スリムクエンチャーが使いやすいし、真空パイント タンブラーも夏に欠かせません。本当に冷蔵庫要らずで、ずっと冷えてます」
自分のライフスタイルに合わせたモノ選び。そして人一倍こだわりが強いからこそ見えてきたスタンレーの魅力。
「アメリカらしくタフに使えるのも魅力ですが、日本らしく大事に使う美学もあると思うんです。ひとつのプロダクトに複数の素材を使っているから、厳密に言えば、硬い素材と柔らかい素材で洗い方が違う。そこで思いついたんですけど、スタンレー専用の洗浄スポンジを作ってもらいたい。そのスポンジがハンマートーングリーンだったら……。そんなことを子供が寝た後、夜な夜な考えています(笑)」
さらなる発展のために盤石の土台づくりを。
2023年3月、「BORDERLESS」のメンバーのほとんどが北海道に集結。新札幌を拠点に、全員でいくつかのスキー場を回ったそうだ。雪山から夜の一席まで、スタンレーも共にした(今回掲載している写真はすべてその時に撮影したもの)。
「基本、集団行動は苦手なんですが(笑)、大人の修学旅行みたいで本当に楽しかったです。スノーボードは言うまでもなく、食事も美味しかったし、みんなで雑魚寝するのもよかった。北海道は何度も行ってますが、今回の遠征で魅力を存分に堪能できました」
すでに今年のスノーボードはオフシーズンに入ったが、「BORDERLESS」としてやりたいことは山ほどある。今後の活動について聞いてみた。
「メディアの継続は大変だと身に沁みているので、まずは基盤を固めないと。メディアを運営することに労力を割いていたら、やりたいことができなくなってしまう。ゆとりがないと、いいものは生まれないと思うんです。だからこそ、これからメディアとして本格的に始動していけるよう準備しているところです」
続けて、具体的なプランについても話してくれた。
「まずは、もっとメンバーを増やして、BORDERLESSのコミュニティを形成しようと考えています。本格的にメディア化するのは、あとから着いてくればいい。仲間同士で、いろんなジャンルの仕事をできるようになったらいいですね。それぞれが活躍して、あの人とあの人が繋がっていて……みたいな、僕が憧れていたストリートの形に近づけたらいいなって。そして、スノーボードがもっと身近に、冬の外遊びとして認識してもらえるようになったら嬉しいですね」
MASAH
1977年生まれ、東京都出身。2003年にスタイリスト三田真一氏より独立。 EXILE、三代目JSBをはじめ、数多くのミュージシャンや広告、ファッション誌、カタログなど多岐に渡ってスタイリングを手掛ける。2016年には藤原ヒロシ氏による「the POOL aoyama」でファミリーウェア企画「IN THE HOUSE」を展開。終了後は伊勢丹で店舗展開をスタート。現在は主に商品のプロデュースや企画のディレクションを行なっている。
Instagram:@borderless_magazine
Instagram:@masah977
Photo:Pak Oksun
Text:Shogo Komatsu
Edit:Jun Nakada